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2011/10/11

ドリームタイム

Taguchidream2011
「ドリームタイム」★★★★☆
田口ランディ(著)




「私」は「田口ランディ」なのだろうか
ルポルタージュのような小説、小説のようなルポルタージュ




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「ねえ、それって芸なの? いったいそこで何をしているの?」
私がそう言うと、ピエロ男は答えた。
「何もしていません」
「何もしていないという芸なの?」
「はい。何もしていないという芸です」
抑揚のない声だった。
「どうしてそんなことをしているの?」
「こうしたいからです」
「なぜ、そんなことをしたいの?」
「何もしていないということを、しているというのが面白いからです」
(ピエロ男)

神と紙は音が同じなんだな、と不思議に思った。
私は私にとってのカミの前に座ったのだ。
そして、カミの前に座ったら言葉が浮かんだので、それを書き始めた。
(シェルター)

フリーダ・カーロの絵を見ていると、夜中の洗面所で暗い鏡をのぞきこんでいるような気持ちになる。
鏡に映る自分がひどくやつれた見知らぬ女に見える。
異界に繋がる背後の闇には、得体の知れない怪物が潜んでいる。
内面の暗部をカンヴァスに転写する。
それがフリーダ・カーロだ。
冷徹に闇を見つめる黒い瞳。
(闇のなかの女)

「じゃあ、人ってのは死なないの?」
「物質を質量のあるものとしてだけで捉えないことです。
すべてはエネルギーです。あらゆるものはエネルギーとして様々に姿を変えて循環しています。
水を見てごらんなさい。氷にもなるし、水蒸気にもなるでしょう。
人間存在もそれといっしょです。でもエネルギーの量は不変です」
(繭のシールド)

「私ね、実は、田口さんが私のことをどう書いてくれるか、それを読んでみたかったの」
「へ?」
「書いてくれって言ってるんじゃないですよ。田口さんのエッセイに出てくるお友達って、
田口さんの視線で編集されてて、それがとてもいいなあ、うらやましいなあと思っていたんです。
だから、私も田口さんの視線のなかに入ってみたかったんだと思う。
そして、私がどんなふうに見えるのか、田口さんの世界の登場人物になってみたかったんだと思う」
(私に似たひと)

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「ピエロ男」
「シェルター」
「闇のなかの女」
「読書」
「肉の花」
「ゾンビの写真」
「生け贄」
「ウタキの青い蝶」
「トイレの神様」
「繭のシールド」
「私に似たひと」
「指」
「不知火の夜」
収録




内容(「MARC」データベースより)
ピエロ男、トイレの神様、フリーダ・カーロの女が現われ…。
この地球に起っている、言葉では絶対に説明できない13の夜の物語。
『文学界』連載に書き下ろし1編を加えて単行本化。

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